William Morris

(1834~1896)
英国の思想家、詩人であり近代デザイン史上に大きな影響を与えたウィリアム・モリスがロンドン郊外の裕福なブルジョア家庭に生まれたのは、今から170余年前のことでした。
幼い頃より中世のロマンスの世界に憧れ、自然に囲まれた大邸宅で過ごす中で、のびやかで牧歌的な感性が養われていきます。
やがて聖職者を志してオックスフォード大学に進みますが、当時の新進社会評論家ラスキンの著書に感銘を受け、ラファエル前派の芸術家(バーン・ジョーンズ、ロセッティら)と出会い、建築・美術・文学の世界にのめり込んでいきます。
彼が新婚生活を送るために建てた「レッドハウス」は、設計から家具、壁紙、カーペット、タペストリーに至るまでモリスと友人達の手によるもので、“世界で最も美しい家”と呼ばれました。これを機に仲間と共に、“芸術と仕事、そして日常生活の統合”という理念を掲げたモリス商会を設立します。
1880年代には、モリス商会と同じ理念を持つ工房やアトリエが多く生まれ、1888年に開かれた美術工芸協会の展覧会の名をとって、彼らの運動を「アーツ・アンド・クラフツ運動」と呼ぶようになりました。

若き日のモリス

モリスの活動の中でも、ひときわ充実しているのが自然の樹木や草花などをモチーフにしたテキスタイルデザインです。
このモリスのデザイン一世紀以上を経た今日でも少しも新鮮さを失わず、世界で根強いファンに愛され続けています。

ウィリアム・モリスの生涯 1834~1896

1834年 0歳 3月24日、富裕な家庭の長男としてロンドン郊外のウォルサムストウ、クレイ・ヒルのエルム・ハウスにて誕生。
1851年 17歳 モールバラ・カレッジにて学内騒動が起こり自主退学。
ウォーターハウスへ転居。少年時代の約8年間(1848年から1856年まで)モリスが住んだ家で、現在はウィリアム・モリス・ギャラリーとなっている。
1852年 18歳 聖職者を志し、オックスフォード大学に合格。
エドワード・バーン=ジョーンズ に出会う。
1855年 21歳 バーン=ジョーンズとフランス旅行をし、ジョン・ラスキン の影響を受け共に芸術家になる事を決意。
大学を去り、オックスフォードの建築家に弟子入りする。
1856年 22歳 先にロンドンへ来ていたバーン=ジョーンズが、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ に弟子入り。
バーン=ジョーンズを通じてモリスもロセッテイ に出会い、画家を志す。
1857年 23歳 オックスフォードの学生会館フレスコ画製作に参加。
この時、ロセッティがモデルとして探し当て、連れていたジェイン・バーデン と出会う。
1859年 25歳 ジェイン・バーデンと結婚。
1860年 26歳 モリスの友人フィリップ・ウェッブ建築によるモリスとジェインの新婚の家、レッド・ハウス完成。
1860年代 モリスとジェイン、ジェインの妹がレッド・ハウスのために、『サンフラワー』 という壁掛けを刺繍。
この刺繍を基にして、2011年アーカイブ・コレクションで 『ジェインズ・デイジー』 が作られた。
1861年 27歳 長女ジェニー誕生。
モリス・マーシャル・フォクナー商会設立。
1862年 28歳 次女メイ誕生。
ロンドン万国博覧会でモリスのデザインした 『デイジー』 の刺繍の壁掛けが金賞を受賞。
1864年 30歳 リューマチ熱後、最初の壁紙 『トレリス』 デザイン。
壁紙 『デイジー』 『フルーツ』 デザイン。
1865年 31歳 商会がうまくいかず、ジェインも鬱病になる。レッドハウスを売却。
1868年 34歳 物語詩 『地上の楽園』 第一巻出版。
1870年 36歳 『地上の楽園』 最終巻により、モリスの詩人の評価が不動のものとなる。
1871年 37歳 スクロール』 『ブランチ』 をデザイン。
別荘となるケルムスコット・マナーをロセッティと共同で借りる。
ここでの生活でモリスの妻とロセッティとの関係が親密になり、モリスは深く傷つく。
1874年 40歳 壁紙 『ヴァイン』 などをデザイン。壁紙 『ウイロー』 商品登録。
1875年 41歳 モリス単独のモリス商会設立。
ファブリックと壁紙 『マリーゴールド』をデザイン。 『アカンサス』 が商品登録される。
1876年 42歳 ファブリック 『ハニーサックル』 『アイリス』 『ピンパネル』 『クラウン・インペリアル』 などを生産。
ファブリック 『コロンバイン』 のデザインは、2011年に 『ブルーベル』 としてアーカイブ・コレクションで復刻。
1877年 43歳 ファブリック 『フルーツ』 などを生産。
1878年 44歳 ファブリック 『ピーコック&ドラゴン』 をデザイン。
ハマースミス近くのケルムスコット・ハウスへ転居。
ケルムスコットマナーにちなんでケルムスコットハウスと命名。
寝室に織機を置き、タペストリーを織り始める。
この頃の作られたラグにはハンマーと川のマークが織り込まれている。
現在、ケルムスコットハウスは、1953年に設立されたモリスの作品や理念を世界に広げるウィリアム・モリス・ソサエティの本部となっている。
1882年 48歳 ロセッティ54歳で死去。
ファブリック 『ブレアラビット』 『バード&アネモネ』 『ローズ&ティッスル』 製作。
1883年 49歳 ファブリック 『ケネット』 をデザイン。人気柄 『いちご泥棒』 商品登録。
1884年 50歳 社会民主連盟の機関誌 『ジャスティス』 創刊。執筆と資金援助を行い、自ら街頭で販売。
ファブリック 『クレイ』 デザイン。
1885年 51歳 壁紙 『ガーデン・チューリップ』 をデザイン。
社会主義同盟を結成、モリスを編集長として同盟の機関誌 『コモンウィール』 を発行。
次女メイ・モリス、商会の刺繍部門の監督となる。
1887年 53歳 壁紙 『ウイローボウ』 デザイン。
1888年 54歳 壁紙 『オータム・フラワー』 デザイン。
1890年 56歳 ケルムスコット・プレス設立準備のため、活字のデザインに熱中。
1890年代 ジョン・ヘンリー・ダールがデザインした 『マリー・イザベル』 が刺繍される。
1891年 57歳 次女メイ・モリスがケルムスコット・マナーのモリスのベッドのカーテンを刺繍。
その刺繍からインスパイアされ、2011年 アーカイブ・コレクションで 『ケルムスコット・ツリー』 がデザインされた。
農業など生産活動が人の手で行われ、労働と芸術が結びついている中世的な 『ユートピア』 を描く。
宮沢賢治の考える理想郷イーハトーブはモリスの流れを汲んで出来たものだといわれている。
糖尿病となる。
1894年 60歳 ジェイン・モリスが、ケルムスコット・マナーのモリスのベッドカバーを刺繍。
1895年 61歳 その刺繍からインスパイアされ、2011年 アーカイブ・コレクションで 『ケルムスコット・トレリス』 がデザインされた。
1896年 62歳 10月3日、ケルムスコット・ハウスにて死去。
1898年 ジョン・ヘンリー・ダールが壁紙 『アーティチョーク』 をデザイン。
1899年 ジョン・ヘンリー・ダールが壁紙 『ゴールデン・リリー』 をデザイン。
1904年 ジョン・ヘンリー・ダールが壁紙 『メドウ・スイート』 をデザイン。
1908年 ウィリアム・アーサー・スミス・ベンソンが、壁紙 『ガーデン・クラフト』 をデザイン。
2011年 モリス商会創立150周年を記念したアーカイブ・コレクションを発売。
モリスの中世のタペストリーからインスパイアされた 『オーチャード』 をサンダーソン社が新たにデザイン。

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